人間の頭脳の優れた機能をまねてモデリングをし、工学的に利用しようとする研究は人工知能、ニューロ、ファジィ、ロボテックスなどの分野で数多く行われ、目的を限れば一部実用化されているものもある。しかし、多くの場合、人間の持つ柔軟性や定性的な情報から適切な特性を捉える能力あるいは学習機能など十分に反映されているとは言い難く、さらに接近が必要である。 人間がある対象に対処していく場合、(a)対象をいろいろな側面から観察し、その特性を能動的に学習し、また(b)その特性に基づいて試行錯誤を繰り返してうまく扱えるようになる。これをシステム論的にみると、(a)はシステムのモデリングに、(b)は制御に対応している。本研究ではこのような過程をマクロな視点から捉えてファジィの概念を導入してアルゴリズム化し、それによってモデリングや学習、制御、予測を行なえる手法を開発している(本手法を能動的学習法とよぶ)。 本研究では特に能動的学習法を高速かつ簡便に行うために、まず能動的学習法のディジタル処理に適した手法を開発し、その手法が様々な非線形システムのモデリングに有効であり、かつ汎用性があることを調べた。次に、この手法の処理系としてディジタルシステムをハードウェア記述言語(HDL)を用いて設計し、有効に機能することを確認した。このハードウェア化により、ソフトウェア処理の10倍〜数10倍の高速処理が実現でき、能動的学習法を複雑なサーボ系の実時間制御やロボットへ利用することが可能となった。
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