人間の頭脳の優れた機能をまねてモデリングし、工学的に利用しようとする研究は、人工知能、ニューロ、ファジィ、ロボティクスなどの分野で数多く行なわれているが、人間が定性的な情報から適切な特性を捉える能力あるいは学習機能が十分に反映されているわけではない。 人間がある対象に対処していく場合、対象を様々な側面から観察し、その特性を能動的に学習し、また、特性に基づいて試行錯誤を繰り返してうまく扱えるようになる。本研究では、このような過程をマクロな視点から捉えてファジィの概念を導入して、アルゴリズム化し、モデリングや制御を行なう手法を開発している。これを能動的学習法とよぶ。 能動的学習法は、多入力1出力の系を1入力1出力に分割して傾向的な情報を抽出するところに特徴をもつ。しかしこの処理はパターン的情報なので非常に時間を要する。 本研究では、能動的学習法での処理を高速に行なうために、専用のハードウェアを製作した。10万ゲートのPLDと128KバイトのRAMをもつPCIカードに、能動的学習法の処理の中で主要な役割を果たすインクドロップスプレッド(IDS)法の論理を実装しだ。IDS法は、1入力1出力のパターン情報から、有用な特性を抽出するために本研究で提案されたものであり、ハードウェア処理に適したアルゴリズムに置き換えている。OSで操作するためのPCIカードのドライバを製作し、ハードウェア処理を実機で確認した。IDS法の一つのユニットを用いた場合、現在のPCにみられる高速なCPUの計算処理には追いつかず、ソフトウェアの処理に比べて、2倍程度の処理時間が観測された。しかしながら、実際に対象にしている問題は、多入力1出力のシステムであり、一つのプロセッサのみでこれをリアルタイムで実現するのは難しい。そこで、簡潔で低コストのIDS法のユニットを複数用意すれば、複数の情報を同時に処理することができ、処理時間も大幅に短縮ができる。これにより、能動的学習法のハードウェア化の有効性がみえてきた。
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