研究概要 |
能動的学習法(ALM)というファジィ的なアプローチに基づいた学習型のモデリング手法を用いて,高速で高精度なシステムのモデリングや制御を行うためのハードウェアシステムの開発を進めた.ALMは,モデリングの対象を単純なパターン情報に分解して学習をしながらその対象の特性を把握するというモデリング手法であり,その過程において複雑な数式や計算を伴わないことが特徴である.これは,ファジィのコンセプトに基づいたユニークなモデリングの手法といえる. 我々が提案したALMには,IDSという特徴抽出用の処理エンジンがあり,ALMが高速にモデリングを行うには,このIDSの専用ハードウェアが必須となる.また,IDSの専用ハードウェアを適用することは,システムの拡張性や頑健さを高める上でも効果的な手段である. 本年度は,ユーザーが自由に回路をプログラムできるプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)が実装されたPCI評価ボードを4台購入し,IDSの回路をPLDに実装する作業を行った.そして,この4台のIDSモジュールをPC上で並列動作させるALMの系を構築した.そして,ALMを動かすためのプログラムとIDSモジュールのデバイスドライバをC言語で作成した.モデリングの実験を通して,ソフトウェアによるALMと我々が製作した4台のIDSモジュールを使用したALMとで性能比較を行い,処理速度とCPU負荷の計測結果からIDSのハードウェア化の有効性を確認することができた.今後の方針としては,より大規模で複雑な対象のモデリングや制御に対応できるALMシステムの実現を目指す.これまで購入した評価ボードは単価が高く,我々の回路に都合の良い部品が実装されていなかったが,本年度の実験結果より本格的なALMのハードウェア化に着手できることを確認した.今後は高速な部品を採用した低価格なハードウェアシステムを自作し,さらなるALMのモデリング手法としての有効性を示していく予定である。
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