研究概要 |
近年増加の著しい糖尿病性網膜症等疾患の早期診断・治癒観察のため,網膜酸素代謝の定量解析が重要である.本研究は,網膜血管酸素代謝の光学的"その場"計測システムの実現を目指し,基盤技術となる血液酸素飽和濃度の高速・高感度な解析法を確立するため,スペクトル色彩解析法を新たに開発することを目的とした. 1.デュアル分光スペクトル計測装置の製作 新設のデュアル型高速ファイバマルチチャンネル分光器とインターフェース,新設コンピュータによる計測装置ハードウェアを構築し,併せて駆動・処理ソフトを設計・開発した.これにより血管・周辺組織両部位の拡散反射率分光データを短時間に同時計測し,スペクトルペアーとしての並列処理を実現した. 2.スペクトル色彩解析用ソフトウェア開発 分光反射率スペクトルデータをXYZ色度座標に変換し,各種色彩評価値を解析するWindows用ソフトを開発した.これより,組織光散乱の影響を補正した血管データ色度ベクトルを算出して,主波長と刺激純度の新しい評価法を提案した.色度ベクトル主波長の統計評価より,動・静脈が自動判別出来ることを確認した. 3.モンテカルロ計算による酸素濃度絶対値化の試み モンテカルロシミュレーションで種々の酸素濃度におけるスペクトルを求め,主波長・刺激純度を計算した後に酸素飽和濃度との関連づけを試みた結果,濃度レベルを数段階に区分評価できる可能性を得た.なお,刺激純度の代わりにCIELAB表色系における色差を用いる方が有利であることもわかった.酸素濃度絶対値への変換用関数確立にはなお精度が不十分であり,平成13年度に引き続きシミュレーションを継続する.
|