研究概要 |
心臓壁に弾性体モデルを適用するには,瞬時瞬時の心臓壁の振動モード(振動パターンの空間分布)を同定する必要がある.そのため本年度は、以下の順に研究を進め、心臓壁の振動モードの同定を行った。 ・固有振動の瞬時値の空間分布を計測と振動モードの決定 本研究代表者の開発した計測システムのプロトタイプを改造し,心筋の振動を多数点で同時に計測可能とした.従来の本研究代表者の計測システムでは,1方向に超音波ビームを固定し,そのビーム上に設定した複数点における振動を計測していた.本研究では,これを改造して新たに多方向に超音波ビームを走査することによって,例えば,左心室の中隔壁側の10点の振動波形υ_A(t;θ_i)と後壁の10点の振動波形υ_B(t;θ_i)を同時に計測し,固有振動の瞬時値の空間分布を算出可能とした.その結果から固有振動の振動モードを決定した.これは弾性球殻モデルを用いた内圧推定において必要不可欠である.この実験は,従来試みられた例がなく,in vivoにおいて心臓壁の細かく速い微小振動の空間分布を算出することによって,非常に画期的な結果を得た. ・心内圧を算出する処理系を設計・製作 計測された心臓壁の微小振動波形に,高精度スペクトル推定法を適用し,心内圧を算出する処理系を設計・製作した. ・水槽実験・in vivo実験による心圧内・心筋の弾性特性計測法の評価 上記2つの項目で作製した装置により,水槽実験,人への適用実験を行って,机上では得られなかった処理細部にわたる検討を行って,処理系全体の精度の評価を行った.その結果十分な精度が得られることが確認された。
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