研究概要 |
心臓壁に弾性体モデルを適用するには,瞬時瞬時の心臓壁の振動モード(振動パターンの空間分布)を同定する必要がある.そのため前年度には、心臓壁の振動モードの同定を行った。平成13年度には、これらの成果を基に臨床応用に向けて医学工学両面での検討を行って手法の確立を図った. ・臨床応用・評価 共同研究者の小岩が属する東北大学医学部第一内科において,多くの循環器疾患の患者(心筋梗塞・心筋症)への適用を行った.同時に心臓カテーテルによって心内圧を計測し,非侵襲的手法の精度評価を行った.患者のデータを解析する上で新たに生じる問題点を詳細に検討し,計測装置に改良を加え完成させた. ・総合評価・総括 以上の結果を纏めて本研究を総括した。 以上の研究成果によって,心臓壁の各部位の微小振動を,数拍以上の時間にわたって高精度に連続計測し,その振動信号を詳細にスペクトル解析し、固有振動数を算出し、心臓壁に弾性体モデルを適用することにより,左心室の内圧情報を決定した。さらに、その計算過程で算出される心筋の弾性的特性という全ぐ新しい診断情報を、非侵襲的に体表から決定することが可能となることが、実験的に確認された.心臓カテーテルによって同時に心内圧を計測した結果と十分な精度で対応している.これら心筋の弾性的特性と心室の内圧情報は,従来の超音波計測法や診断装置では計測出来なかった画期的診断情報である. 本計測方法の開発によって,心筋症・心筋梗塞などの循環器疾患による心筋の音響的・力学的変化とその進行・退縮の程度と範囲を定量的に診断することが可能となり,循環器疾患に関する全く新しい組織診断・治療評価の領域に貢献できたものと言える。
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