ラミノグラフィ(またはエクトモグラフィあるいはトモシンセシスとも呼ばれる)は、生体イメージング技術として歯科を中心とした画像診断装置、あるいは物体の内部構造を画像化計測技術として用いられてきた。しかし、データを収集するためのx線源の走査軌道に制約があるため、完全な画像を再構築することは困難であった。 そこで本研究では、X線源の走査軌道と再構築される画像との関連を究明し、不完全な走査軌道からでも比較的良好な画質の2次元断面像を再構築する手法を検討した。更に被写体の完全な3次元像を再構築することができる走査軌道を求め、3次元画像を再構築するアルゴリズムを確立した。これらはシュミレーション実験によって有効性が検証された。 様々な応用分野においては、このようにして得られた3次元像を効率的に蓄積・伝送する、あるいは表示することが要求されてくるものと考えられる。そのためには、3次元構造を少ないデータで正確に表現する3次元形状モデリング技術の開発が必要となる。このような状況を考慮し、本研究では被写体の3次元像を再構築するだけではなく、その形状を表現あるいはモデリング技術についても研究を行った。 まず、関数によって3次元形状を表現するものとして、拡張Hyperquadric関数を提案した。最適化手法を用いて関数を校正する形状パラメータを算出するアルゴリズムを求めた。この手法をいくつかの形状データに適用した結果、少ないパラメータで多用な形状を表現することが可能であることを明らかにした。 より詳細な形状まで表現するものとして、三角形メッシュを用いた表現法について研究した。入力されるデータから重要性の低い頂点を除去して、対象の大域的な形状を表すためのベースメッシュを作成する。さらにこのベースメッシュを細分割し、平均化を行って得られる滑らかな細分割曲面で大域的な形状を構成する。微細な構造は、この滑らかな大域的な形状からの方向性を持った変位として表す。すなわち、ベースメッシュからの細分割曲面と、これからの方向性変位の2つのデータで形状を表現するものである。この方向性変位を求める手法を提案し、微細構造の表現能力を確認した。また細分割で得られるメッシュの規則性を用いることにより、効率的な表現か可能であることを示した。 このように3次元像を生成する技術と、その3次元構造を効率的に表現する技術が結合されて3次元ラミノグラフィが実現される。
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