嗅覚ロボットは、匂いの発生源の位置を探索するロボットである。予備実験では半導体ガスセンサを搭載していたが、応答回復時間が長くロボットの移動速度を上げると追従しなくなる問題点があった。本年度は応答回復時間の短い水晶振動子ガスセンサを使用したロボットの基礎的検討を行なった。水晶振動子ガスセンサの出力は周波数カウンタで計測するが、典型的な周波数カウンタでは要求される時間分解能と周波数分解能を同時に満足することができない。そこで、周期測定を基本とするレシプロカル方式の周波数カウンタを開発し、FPGAに組み込んで用いた。従来の周波数カウンタの時間分解能が1秒、周波数分解能1Hzに対し、開発したカウンタの時間分解能が1/6秒、周波数分解能が約1Hzである。一般室内にトリエチルアミンを放出してプルーム(発生源から風下にたなびくガスの分布)を作り、ロボットの移動速度を従来の1cm/sから10cm/sに向上させてプルームと垂直の方向に走行させた結果、移動速度を上げてもプルームを検出することが可能なことがわかった。次年度に高速ロボットによる探知実験を行なう。また、センサの過渡応答特性の検討も行なった。トリエチルアミンガスと同時に可視化材(トレーサ)を放出して、センサ応答とトレーサによる散乱光輝度を同時に計測する。散乱輝度は瞬間ガス濃度に対応するとみなせるので、散乱輝度とセンサ応答の関係によりセンサの伝達関数モデルを決定できる。散乱輝度とセンサ応答がほぼ対応する関係が得られ、2次遅れ系の伝達関数を用いてセンサの動的挙動を大まかに説明できることがわかった。ただし、センサの非線形的挙動等は十分に説明できないところもあり、次年度ニューラルネットワークを用いたモデルを検討する。さらにセンサパッケージと過渡応答特性が密接に関係することがわかり、速いセンサの応答・回復速度を得る指針が得られた。
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