多関節多指ロボットハンドに、繊細な作業感覚すなわち「対象や環境に過大な力をかけることなく、所望の物体操作を行いながら対象の状態を精度良く認識する能力」を実現することを目的として以下の項目について研究をすすめた。なお、実験には並進滑りのない転がり接触による物体操作制御則を実装した3関節指3本で構成されるロボットハンドを用いている。 1.最適把握の計画手法 物体操作にあたって、指先接触点での法線回りのねじり滑り量を最小化する把握の計画手法を開発した。物体操作実験を行い、計画された把握を用いれば、把握力を小さめにしたときには並進滑りが生じにくくする効果があることを確認した。 2.物体操作中の指先滑りの検出と滑り量の計測手法 指先滑り検出手法を開発し、実験でその効果を確認した。これは、操作中の物体の位置姿勢を計測するステレオ視覚システム、指先に装着した6軸力トルクセンサ、関節角度センサを用い、それらから得られる情報を統合して実時間で滑り量を計測し滑りを検出するものである。特殊な試作センサを必要とせず、一般的で入手容易な商用センサのみを用い、多関節多指ハンドの物体操作機能を妨げることなく滑りの検出が実現できた。 3.作業モデルの構築 peg-in-holeを対象として、状態変化の系列と動作プリミティブおよび状態変化判定手続きからなる作業モデルを構築した。このモデルのなかで、滑り検出によるエラーリカバリの可能性について検討し、滑り検出の有効性を確認した。
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