災害時に倒壊した建造物に埋もれた人体を、マイクロ波を瓦礫に照射してその反射成分に含まれる人体の呼吸成分を検出することで検知する手法を検討している。今年度の実績は以下の通りである。 1.検出回路の改良 これまで、一つのアンテナで送受信を共用する構成をとっていたが、定常波(瓦礫表からの反射)のキャンセル回路が敏感すぎて安定度が悪く、かつキャンセルできる量も高々50dB程度であった。今回、送信アンテナと受信アンテナを分離し、キャンセル回路は受信系にのみ組み込むように回路を変更した。これにより、キャンセル量は70dB〜80dBまで増大し、かつ安定度も増した。この改良により、瓦礫のより深いところまで検知できるようになった。 2.人体検出実験 人体検出実験を繰り返し行った。測定回路の改良により、木材建造物の瓦礫であれば厚み80cm程度まで検知可能であることを確認した。 3.定常成分キャンセル手法の検討 定常成分のキャンセルを回路的に行うことだけでは限界がある。電波吸収体の整合手法を利用し、受信アンテナ前面に誘電体の整合板を設置する手法についてシミュレーションを行った。その結果、厚み数mm程度の板を用いれば、20dB〜30dBのキャンセルを行えるという結果を得た。今後実験的検討を続ける。
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