研究概要 |
茸の成育に必要な培地・温度・湿度・光などの至適成育条件の科学的側面からの検討は大変遅れている。本研究では,茸の成長の活性化と密接な関係があると考えられる生体電位信号に着目し、生体電位と光刺激条件(波長,輝度,照射方法など)との対応関係や光刺激と形態形成との関係を調べている。本年度の実施事項は、以下の通りである。 (1)空気組成を任意に設定可能な人工気象器を考案し、光刺激による生体電位の精密自動計測システムを設計・製作した。これにより、各種光刺激条件が任意に設定でき、しかも生体電位を高精度で自動計測できるシステムが再構築できた。 (2)光刺激因子を系統的に変化させ生体電位の挙動を検討した。 (a)強さ・明暗刺激間隔 最適な光照度は約300lx〜800lxと言われているが,成長促進や変色効果にも寄与する光の強さ、更にサーカディアンリズムと深く関与すると推定できる明暗刺激間隔などが与える影響について、生体電位を指標とした基礎データを得た。 (b)波長(光刺激の色) 刺激光の波長が成長促進や変色効果へ与える影響を検討するために、キセノンランプと干渉フィルタとを組合わせ、系統的に単色の発光波長を変化させ、茸の生体電位を計測することで、波長依存性の基礎データを得た。 (3)茸工場での実地試験(形態形成実験) 上記(1)(2)の結果を踏まえ、成長促進に有効な中心発光波長を特定し、その波長で発光する超高輝度型LEDを用い、栽培現場で使用できる光源パネルを作製した後、刺激光にゆらぎを効果的に付加できる光源制御用電子回路も併せて設計製作した。なお,ゆらぎは「周期ゆらぎ」(パルス点滅の間隔にゆらぎを付加)とし、ゆらぎの種類は、1/fゆらぎに設定した。その結果、「ゆらぎ」により茸を成長させる傾向があった。
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