研究概要 |
本研究では、広いクラスの非線形性を記述できるウィナーモデルをもとに、新たな非線形システム同定法を提案した。ウィナーモデルに基づく非線形システムの同定については,これ迄に種々のパラメトリックな同定法法が提案されているが,1)非現実的な制約が多い,2)モデルパラメータの変動に対応できない,3)モデルパラメータの収束性,などの問題がある.これに対し,本研究では従来研究でも用いられていた部分空間同定法にモデルパラメータの最適化手法を組み合わせて,上記の問題点を解決すると同時に,同定コストが低く実用性の高い同定法を開発した.具体的に本同定法は,一般の同定入力を前提とし,モデルパラメータの初期値の推定方法と非線形最小二乗法に基づく最適化アルゴリズムの二段階構成になる。さらに,計算コストが低減でき,モデルパラメータの変動に適応可能なオンライン最適化アルゴリズムも開発した.そして、数値例でこの手法の妥当性を確認した.さらに、半導体ウェハ成膜時の熱プロセスのシステム同定にこの手法を応用し、線形モデルよりも高精度のモデルが得られることを確認し、これにより、本非線形システム同定法の実用性を示した.以上の非線形システム同定の結果を用いて、非線形システム制御を行うために必要な制御系構築、サーボ系設計法、オブザーバ設計法を導出した.具体的に本研究では、ウィナーモデルの構造的特徴より、拡張カルマンフィルター用いるとウィナーモデルの線形部が制御可能となることに着目し、ILQ設計理論を適用してウィナーモデルの線形部の出力を制御し、間接的に非線形システムの出力を制御する。提案したウィナー型非線形システムの制御手法の有効性をシミュレーションで確認した.また、上記項目の検証用として実験装置を作成中である.さらに,線形部のパラメータ推定法の改良を目的として,部分空間法と関連深いq-Markov COVERの研究も行っている.
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