本研究の目的は、電磁場環境下で有効に機能し、人間に電磁波被害を及ぼさない電磁両立性(EMC)と共に、高制御性能を備えた人間協調型空気圧アクチュエータを開発することにある。これにより、電磁ノイズに強い安全で快適な社会環境の実現に寄与することにある。 最初の研究成果として、空気圧アクチュエータの制御精度を改善するために、従来のPID制御に加えてニューラルネットワーク(NN)を併用する知的制御手法を提案した。ここでの狙いは、非線形写像を実現するニューラルネットワークを用いることで、プラントに内在する非線形要素に対処することである。ここでは、まず、NNがプラントの非線形性のみを補償するように学習の方法に工夫を加えた。また、プラントの構造的な非対称性に対応するために複数のNNを用いる制御切替則の検討を行うこととした。シミュレーション実験および実機実験を行い、従来のPID制御に対して、本研究で提案したNN併用型PID制御の有効性を確認した。 第2の研究成果として、従来から位置情報の取得に用いられているマグネスケールセンサの代替手段としてCCDカメラの使用を提案した。これにより、EMCに優れた空気圧アクチュエータの実現の方法を示した。ここでは、CCDカメラを空気圧アクチュエータの側面に設置して、リアルタイムな画像取込みよび画像処理を行うことで位置情報を取得した。限られた画像解像度においても良好な精度が得られるように複数個の測定点を用いる等の工夫を行った。実機実験の結果からCCDカメラを用いた位置情報に基づくNN併用型PID制御においても、マグネスケールセンサと同様の改善効果が得られることが確認した。 本研究で得られたEMCに優れた高精度な位置決め制御を可能にした人間協調型の空気圧アクチュエータに関する研究成果は、MRI機器内における手術ロボットや高齢者に対する福祉医療機器開発のための基礎技術としての活用が期待される。
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