1.交付申請書に記載した通りの実験を行った。すなわち、現場で実用されている唯一の樹脂エマルションを用い、水セメント比を3種類に変化させたモルタルに対する水平打継目強度改善効果と改善手法を実験的に調べた。 実験を通じて得られた主な知見は以下のようである。 (1)樹脂エマルションの散布時期を下層モルタルの打込み直後、ブリーディングが最大となる時期(打込み後約2.5時間)および凝結始発時間の何れに変えても、この種類の樹脂エマルションの使用効果はほとんどなく、むしろ、打継目をワイヤブラシで処理する従来の手法の方が優れている。この原因は、樹脂エマルションがそのまま打継ぎ面に薄膜の形態で残存するためである。 (2)打継ぎ時にポリマーセメントの形で適量(1kg/m^2)塗布する方法を採れば、打継ぎ強度はワイヤブラシで処理する方法に比べて改善される。 2.問題点と今後の展開 (1)内容的には上記のような結果が得られたが、試験値のばらつきが異常に大きい難点がある。現在は、供試体作製時の僅かな振動の差異と割裂試験時の僅かな位置のずれがこの原因となっていたことが判明し、この対策にも目途が立った状況にある。公表時までに、再試験を行い、データの信頼性を高めることにしている。 (2)新たに5種類の樹脂エマルションを入手し、少なくともこの中の1種類は研究開始当初に期待した効果を有することを確認した。今後は、これらの新しい樹脂エマルションも研究の対象とする。
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