1.再分割プログラムの開発 部材中に逐次進展するひび割れを、解析で計算される部材の主引張応力が引張強度に達する点に1ステップあたりひび割れ要素を一本ずつ挿入し、この計算を繰り返すことにより表現した(以後ひび割れ増分法)。ひび割れ要素は主引張応力方向に対して直角に挿入し、部材中の複雑な応力状態により発生する斜めひび割れおよび分岐ひび割れを、四辺形要素および三角形要素を用いて再メッシュ分割が可能となった。 2.せん断破壊時に発生するひび割れ面に平行な方向の伝達応力関係の表現 ひび割れには、ひび割れ面垂直方向の相対変位により発生する垂直応力(model)、ひび割れ面水平方向の相対変位により発生するせん断伝達応力(mode2)、および両方向に変位した場合の応力伝達関係(mode3)を考慮しなくてはならない。また、せん断破壊時には部材上縁での圧縮を受けるひび割れがせん断すべりを起こし破壊にいたる。これらの複雑な伝達応力関係を、圧縮状態に対してはコンクリートの破壊基準、引張状態ではひび割れ面での引張軟化特性およびせん断剛性低下特性を考慮した構成則を用いて表現した。 3.鉄筋とコンクリート間に作用する付着・支圧特性を考慮した付着要素の開発 鉄筋とコンクリート間の応力伝達機構には、鉄筋軸方向に作用する付着応力、および鉄筋のだぼ変形時に発生する支圧応力が挙げられる。付着特性に関しては、コンクリート強度(低・高強度)、試験方法の違いによるコンクリートの応力状態(引張・圧縮)、コンクリートの種類(普通・軽量)をパラメータとした付着試験を行い、この結果を逆解析することにより付着応力-すベリ関係を明らかにした。支圧特性に関しては、2次元解析では部材奥行き方向の応力分布が考慮できないため、従来の研究結果を逆解析することにより、部材厚さを考慮したパラメータを新たに取り入れ、その支圧応力-相対変位関係を明らかにした。 4.ひび割れ要素・付着要素を用いたせん断ひび割れの進展に関する研究 上述した1、2および3で行った研究成果を用いて、RCはりのせん断ひび割れの進展に関する研究を行った。ひび割れ増分法および離散型要素を用いることにより、曲げ・せん断ひび割れの進展時にはひび割れを跨ぐ部分での鉄筋軸力・曲げモーメント、および付着・支圧応力の局所的な増大を表現することが可能となった。また、最大荷重時には、圧縮部のひび割れ面でのせん断抵抗、およびひび割れを跨ぐ部分での鉄筋のダウエル作用によるせん断耐荷機構をモデル化することが可能となった。
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