研究概要 |
本年度は,焼却飛灰中に内在する塩類による鋼材の腐食性状を明らかにするため,飛灰をエージング処理した場合と飛灰を洗浄することによる水洗脱塩素効果を期待した水洗処理の2種類の方法により処理された飛灰を用いて,水中浸漬および中性化促進試験を実施し,焼却飛灰のコンクリートへの有効利用の可能性について検討を行った。 焼却飛灰は炉方式ストーカ炉,排ガス処理システム乾式で電気集塵機により集められた清掃工場の異なる4種類を用いた。コンクリートの配合は,水結合材比を55%,細骨材率を44%とし,目標空気量は,焼却飛灰A(密度2.75)を用いた場合は4%とし,焼却飛灰B(密度2.36)を用いた場合は2%とした。焼却飛灰は,セメント重量の外割で0,10,20%混入した。 本実験で得られた結果を要約すると以下のとおりである。 (1)焼却飛灰の溶出特性は,エージング処理によりPbは減少し,水洗処理によってもPbおよびCl-は減少する。 (2)圧縮強度は飛灰の処理方法によって若干異なるが,無混和のものとほぼ同程度の強度を得られる。 (3)エージング処理した飛灰の中性化深さ,塩分量は共に,焼却飛灰混入率が増加するに伴い増加する傾向にあった。 (4)焼却飛灰中に内在する塩素イオンが多い場合は,鋼材の腐食が促進されることが明らかとなった。 (5)エージング処理した飛灰のコンクリートからのPbの溶出は環境基準値以下になった。 以上のことから,エージング処理した場合は,焼却飛灰をコンクリートへ混入しても重金属溶出の観点からは問題はないと考えられるが,鉄筋腐食の問題が残され,水洗処理をする場合は,鉄筋腐食の面からは有利に作用するが,重金属類を含んだ洗浄水の2次処理が今後の課題と思われる。従って,焼却飛灰の再資源化を図るためには,鉄筋腐食に関与しない,無筋コンクリートやポーラスコンクリートへの利用が有効と考えられる。
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