研究概要 |
コンクリート構造物は,打設時の充填不良や機械のトラブルによる打設作業の中断などの施工不良によって,その品質が大きく左右される。また,打設後のコンクリートは脱型後,直ちに乾燥状態におかれるため,乾燥の程度によっては表層部の微細ひび割れの発生や細孔空隙の増大をまねくことになる。 そこで本研究では,乾燥履歴を受けたコンクリートの細孔空隙構造を明らかにするとともに,これら細孔空隙が塩分の拡散浸透に及ぼす影響について凍結防止剤散布環境下で暴露実験を行った。さらに,乾燥履歴の状態や凍結防止剤の塩分環境が,橋梁のRC床版の塩分浸透に及ぼす影響を数値解析により検討した。 その結果,乾燥履歴を受けたコンクリートは,乾燥により全ての細孔径での空隙が一様には増加せず,細孔直径で50nm〜2μmの毛細管空隙量の増加が顕著になる。この細孔空隙量より定めた毛細管空隙率比と乾燥温度,乾燥期間をファクターとした細孔空隙関数を定義し,塩分浸透からみたコンクリートにおける細孔空隙量の増加の程度を評価した。細孔空隙関数は,塩分の拡散係数と強い相関があるため,乾燥履歴を受けたコンクリートの空隙状態に対する塩分拡散係数の予測が可能となることが判明した。 さらに,この細孔空隙関数を用いて,暴露実験地での橋梁のRC床版に乾燥や表層ひび割れによる劣化が生じた場合や,アスファルト舗装に貫通ひび割れが生起した場合のRC床版の塩分拡散特性を有限要素法により数値解析的に検討した。その結果,RC床版のひび割れ深さ,アスファルト舗装のひび割れ密度が塩分浸透に対して大きな影響を及ぼすとともに,RC床版が乾燥履歴を受けた場合の空隙量の増大は,長期間の塩分蓄積に影響してくることが明らかになった。
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