研究概要 |
コンクリート構造物は,コンクリートの打込みや締固め作業が,機械のトラブルなどにより中断した場合に,先に打込んだコンクリートと後から打込んだコンクリートが完全に一体化していない不適当な打継ぎを生じることになる。打継ぎ部は,強度的な低下のみならず水密性や塩分浸透性などの耐久性にも悪影響を及ぼすことになる。この打継ぎ部の細孔空隙構造や継目に沿う塩分の拡散特性は十分に解明されていない。そこで本研究では,打継ぎ榔の細孔組織構造を明らかにするとともに,打継ぎを伴うモルタルの塩分拡散特性を電気泳動法に基づく急速塩化物透過試験により検討した。 その結果,鉛直打継ぎを有する供試体の圧縮強度は,打継ぎのない供試体のおよそ0.88〜0.90である。載荷によるAE発生特性としては,打継ぎ面をもつ供試体は最大荷重付近で検出されるPeak Load AEが顕著であるとともに載荷直後のAE増大以降も打継ぎ面の剥離による摩擦音とみられるAEの発生が認められる。また,打継ぎを有する供試体の全細孔空隙量は,打継ぎ面のない供試体に比べておよそ8〜25%増加する。その増加は,各細孔径で一様ではなく,細孔直径で1μm〜10μmの範囲の空隙が増加する傾向にある。 モルタル中の塩化物イオンの移動に及ぼす打継ぎ油の影響は,細孔組織の繊密化が期待できる水セメント0.4のモルタルでは小さくなる。水セメント比が0.5及び0.6では,打継ぎ面を有するモルタルの塩化物イオンの移動度は,打継ぎ面の無いものに比べて大きくなる傾向にある。 以上より,モルタル中に打継ぎ面が存在する場合には,塩分の浸透深さは一様ではなく,打継ぎ面に沿って塩分浸透深さが深くなる。すなわち,打継ぎ面が介在したモルタルの塩分拡散には局所性があり,打継ぎ部周辺で塩化物イオン拡散係数に違いが生じることが判明した。
|