研究概要 |
コンクリート構造物は,コンクリートの打込みや締固め作業が中断した場合や,厳しい気象条件下においては,コンクリートが一体化していない不適切な打継ぎを生じることになる。このため,打継ぎ面の処理状況によっては,強度的な低下に加えて,塩分浸透に対する抵抗性の低下も引き起こす可能性がある。このように,打継ぎ面が介在した場合には,コンクリートの塩分拡散には局所性があり,打継ぎ面での塩化物イオン拡散係数は打継ぎ面の周辺部より大きくなることが指摘されている。しかし,材齢の進行に伴う塩化物イオン拡散係数の経時的変化については,十分に解明されていない。そこで本研究では,打継ぎ部の材齢の進行に伴う塩分拡散特性を電気泳動法に基づく急速塩化物透過試験により調べた。さらに,余剰となって廃棄されたコンクリートから,粉末状態で回収されたセメントの塩分浸透に対する抵抗性を無処理の普通セメントと比較検討した。 その結果,打継ぎ面での塩化物イオン拡散係数は,材齢14日で3.72x10^<-7>cm^2/secで,打継ぎ面のない供試体より約76%大きい。さらに材齢91日では68%,190日では60%それぞれ打継ぎ面のない供試体より大きくなる傾向にある。材齢早期で,打継ぎ面の介在により塩化物イオン拡散係数に差がみられたのは,新旧モルタルの打継ぎ面での水和生成物の生成が不十分で,細孔組織が緻密になっていないことが塩分浸透に影響したためと考えられる。これが,材齢の進行につれて次第に小さくなるが,材齢長期においても打継ぎ面での塩化物イオン拡散係数は,打継ぎ面を介在しないものより大きくなる傾向にあることが明らかになった。 さらに,凍結乾燥処理により再生されたセメントの塩分浸透に対する抵抗性として,乾燥処理を施す過程でセメント粒子表面の水和が進行するため,塩化物イオン拡散係数は新鮮なセメントに比べて20%前後増加することが判明した。
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