研究概要 |
コンクリート構造物は,コンクリートの充填不良や締固め作業の中断,あるいは脱型後の乾燥の程度などにより細孔空隙の増大をまねき,これが塩分浸透に対する抵抗性を低下させることになる。このような人為的な施行不良に起因する細孔空隙構造と塩分浸透抵抗性の評価はほとんどなされておらず,細孔空隙の定量化と塩分浸透モデルの構築が必要な状況にある。 そこで本研究では施行不良に伴う塩分浸透特性として,脱型後の乾燥履歴による細孔空隙量の変化が塩分浸透に及ぼす影響,ならびに不適切な打継ぎ面を伴うコンクリートの細孔空隙構造と塩分浸透の局所性について取り上げ,電気泳動法に基づく急速塩化物透過試験により検討した。その結果,以下のことが明らかになった。 (1)乾燥履歴を受けたコンクリートは,乾燥により全ての細孔径での空隙が一様には増加せず,細孔直径で50nm〜2μmの毛細管空隙量の増加が顕著になる。この細孔空隙量より定めた毛細管空隙率比と乾燥温度,乾燥期間をファクターとした細孔空隙関数を定義した。この細孔空隙関数は塩化物イオン拡散係数と強い相関があるため,乾燥履歴を受けたコンクリートの空隙状態に対する塩化物イオン拡散係数の予測が可能となる。 (2)打継ぎを有する供試体の全細孔空隙量は,打継ぎの無いものに比べて8〜25%増加する。その増加は,各細孔径で一様ではなく,細孔直径で1μm〜10μmの範囲の空隙が増加する傾向にある。モルタル中に打継ぎ面が介在する場合には,打継ぎ面での塩化物イオン拡散係数は打継ぎの無いものより約55%大きくなる。材齢長期においても打継ぎ面とその周辺部とで塩化物イオン拡散係数に違いがあるが,その差は材齢の進行とともに次第に小さくなる。 (3)打設遅延などによる戻りコンクリートから再生したセメントのもつ塩分浸透に対する抵抗性は,新鮮なセメントに比べて,硬化セメントペーストの塩化物イオン拡散係数で約20%増加する。
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