研究概要 |
本研究は戦後植林した、スギを中心とした人工林の成長に伴い、木材のリサイクル容易な材料特性を生かすため、橋梁材料としてその有効利用を計ろうとするものである。かっての木橋との大きな相違は、木材を集成材として再構成すること、および研究課題にあるように、橋床には木材を使用せず鋼床版とすることである。鋼床版を採用するのは集成材主桁を雨水から守り、耐腐朽性を向上させるためである。 集成材主桁上面に垂直方向に加工されたスリット(溝)に、デッキプレートに溶接された縦平リブ(上リブ)を落とし込み、エポキシ樹脂で接着接合する。桁下面にも同様にリブ(下リブ)を接着接合して、桁の剛性を向上させると共に、正曲げによる桁の脆性破壊を鋼の延展性で防止する。本研究では曲げに伴うせん断力が上リブ側面にどのように分布するのかを梁理論を基礎として解明した。その結果上リブの両側面に発生する、橋軸方向のせん断応力は合成断面の図心からの距離と断面に作用しているせん断力に比例して増加することが、簡単な理論式で説明されることを発見した。さらにこのせん断応力は、鋼のヤング係数をEs,集成材のそれをEwとし、両者のヤング係数比をn=Es/Ewと置くとき、(n-1)に比例する。これらの結果はすべて力学的直観に一致するものである。 架設予定のキングポストトラスで各径間を補剛した二径間連続桁橋(橋長55m)にこの理論を適用し、中間支点近傍のせん断応力を定量的に評価し設計に役立てた。また支点近傍の1/2部分模型(支間長5.4m)を二体作成し一点載荷(50tf)負曲げ試験を行い曲げ耐荷力を調べた。その結果、たわみに及ぼすせん断力の影響は40%にもおよぶことを実験的にも解析的にも明らかにした。
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