本研究は、長大スパン斜張橋を対象に、静的、動的安定性が確保できる限界最小断面の追求を行ったものである。斜張橋のコスト低減を達成するには、主桁断面をいかに、安全かつ小さくするかにかかっている。安全な小型断面の設定は、ケーブルサイズ、塔サイズの低減、また基礎工事費の低減に結びつくものである。本研究では主桁断面の小型化の追及とあわせて、相対的に高価なケーブルの安全率低減の可能性も検討している。まず、ケーブルの安全率低減の可能性に関する研究から得られた結果を要約する。 1)斜張橋においては、ケーブルの塑性伸びに起因して、大きな圧縮軸力を受ける主桁が座屈し、終局状態となる。2)終局時の荷重倍率(終局時の作用荷重と死、活荷重の比)は極めて簡単に計算できる。すなわち、ケーブルの耐力と発生最大応力の比でもって安全側に推定できる。3)ケーブルの安全率を現行の2.5(破断に対して)から2.2に砥下させても、橋梁全体の安全率1.7は確保できる。4)フラッター風速、横ねじれ座屈が生じる風速は、ともにケーブル安全率の影響を受けない。一般に前者に比べて後者の風速が低いが、設計風速はクリヤできる。 ケーブルの安全率を2.2に低減した上で、静的、動的安定性を確保できる最小断面の特定に関する研究から得られた結果を要約する。 1)桁幅としてスパンの50-55程度を選び、塔位置の桁端部(横断面内)の板厚を適切に補強すれば安定性(フラッター、横ねじれ座屈)の確保が可能となり、これまで言われてきた比40は限界とならない。2)面内耐力の観点からは、桁高はかなり小さくできるが、製作性、架設時安定性、維持管理を念頭に入れて、2.0-2.5mを最小とする。桁幅が広い場合、橋軸直角方向にに発生する応力も念頭に入れて最小桁高を検討する必要がある。3)終局時の荷重倍率は、ケーブルでは、耐力と発生最大応力の比、主桁、塔では、局部座屈強度と発生最大応力の比を計算し、いずれか最も小さい値を選べばよい。
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