研究概要 |
強風の発生は気象学的規模のマクロスケール因子,地理学的領域のメソスケール因子,そして数十〜数百メートルの規模の局所地形に関わるミクロスケール因子に支配されている.本研究では対象地点周辺の局所地形を代表すると考えられる谷度,山度,走行,等の局所地形因子をビデオ画像と国土数値情報を利用して新たに導入した.その結果,メソスケールレベルで予測された対象地点を代表する風速を16方位別に,ミクロ並びにメソスケール地形因子の特性に応じて増速・減速効果を与えることにより,高い精度で風向別強風特性が推定できた.しかしながら,海岸部や谷筋部といった特徴的な地形区分における測点を抽出して地形因子解析を行った結果,抽出した観測点に共通する地形因子の影響が弱められる結果となり,強風特性を支配していると考えられる地形因子のより詳細なモデル化が必要であることが判明した. また,局所強風に関わる代表的な地形因子として丘状地形に注目し,昨年度実施した丘による増速効果が丘の形状パラメータ(法面勾配,丘頂部の長さ),丘の表面粗度,接近流の気流特性によって支配されるメカニズムを丘状地形模型の表面に直径1mmの圧力孔を設置し,表面圧力測定実験から検討した.その結果,丘の上流側の法肩で剥離したせん断層によって形成される丘頂部の負圧の値と増速率が密接な関係があることが判明した.これによって,丘の法肩で剥離した流れが天端上に再付着する場合には剥離バブル内の負圧の絶対値は,剥離流が再付着しない完全剥離型となる丘における負圧の絶対値より高くなり,増速率が増加すること,また,丘の法面勾配によっても丘頂部の負圧が変化し,増速率の変化と対応していることが明らかとなった.
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