研究概要 |
本研究の最終目的は,大気境界層中にある柱体の空力特性を明らかにすることである. まず,乱流生成法で最も基本的な格子乱流法の自然な拡張である擬似格子法によって生成される乱れの基本特性を調べた.これまでのマルチファン型風洞の乱れ特性の研究は低周波数に限られていたが,本研究では広い周波数範囲でスペクトル特性を調べた.得られた乱流レイノルズ数はRe_λ=200〜400であり,過去の乱流の研究結果と同様の間歇性やレイノルズ数依存性を示した.歪み度因子が負となる原因は必ずしも間歇的な変動だけでは説明できないことが分かった.擬似格子法による乱れはマルチファン型風洞で生成されるいろいろな乱れの標準となりうることが分かった. 次に,より現実に近い乱流境界層を模擬生成する技法を確立する目的で一連の実験を行なった.おもな結果は次のとおりである. 1)ラフネスと平板のバリアを組み合わせて流れを乱し目標となる境界層を生成した. 2)アクティブ制御法は,平均風速分布は再現するが,目標の乱れ強度と比較し観測される乱れ強度分布は壁面近くまで均一で動的特性は大きく異なる. 3)アクティブ制御法とラフネスの組み合わせによる方法で乱れ強度を目標値に近づけることができた.この方法で床面近くの乱れスケールを低下させうる. 4)アクティブ制御法による境界層ではw-成分の振幅が小さくu-成分との相関に乏しい.したがってレイノルズ応力は実際の境界層に比べ小さな値しかとらない. アクティブ制御法による境界層は目標の境界層に比べ渦構造が乏しい.大気境界層を模擬生成するには,流れ直角方向への変動を誘起するような工夫が必要である.送風機ごとの入力信号の振幅と位相の空間的なヴァリエーションを生かすことが今後の課題である. 平行して,モデルとして最も簡単な円柱を使用して実験を行なった.食い違い配置の2円柱周り流れを調べ、後流円柱を上流に移動させる時、ある地点で臨界的な背圧の回復が見られた.いろいろな二円柱配置で流れパターンをPIVで計測しこの臨界的な挙動の機構を明らかにした.
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