研究概要 |
基礎地盤もしくは土構造物内に補強材を敷設(設置)して,土構造物の剛性や強度を増加せしめようとする補強土工法のアイデアは,古くから土木技術の一つの要であった.昨今の社会ニーズは,新規構造物の建設から既設構造物の維持・補修に移りつつある.土構造物が過去に受けた履歴と無関係に,その構造物の最終的形状だけで決まる全体的な極限釣り合いに基づく現行設計法では対処しづらいケースが増えつつある.本研究課題はこのような社会ニーズに合理的に答えうる技術体系の確立を目的としている.土構造物に対する補強とは,剛な固定端で反力をとって土構造物を支えようとする機構ではない.土と補強材が一体となって剛性や耐荷力が向上しているメカニズムである.申請者は,土のダイレタンシー変形を補強材が拘束するメカニズムがポイントであると考えている.まず1)ダイレタンシー拘束による補強効果発現メカニズムを検証し,2)土と補強材との最適な組み合わせの存在を示したい.さらに,3)それを表現できる数理モデル(有限要素解析手法)を開発する.最終的には,期待される補強効果を予測できる手法としてまとめあげたいと考えている. 平成12年度の成果としては, 1.補強材にジオシンセティックスを用いた模型実験を実施した.土および補強材の変形と補強効果を計測した. 2.このような問題に対して,土固有の構成モデルを用いた初期値・境界値問題の構成が不可欠である.本申請では,実務面でも実績を積みつつある関口・太田モデルを用い,圧密による変形・強度変化を考慮した土/水連成場を展開した.構成モデルの適用は,従来,正規圧密粘土(ゆるい砂)もしくは,せいぜい弱い過圧密粘土地盤を対象としていた.本申請では,構成モデルの適用性を過圧密状態(密な締固め土)に広げた.逆に,このような試みを通して,構成モデルの欠点,問題点が明らかになり,改良または淘汰されてゆく. 3.不飽和土供試体の力学特性を把握する目的で,同一の材料でありながら,初期含水比,締固め度合いが異なる複数の供試体を用意し,定体積一面せん断試験を実施した.得られた実験結果から,構成モデルの適用性を検討した.その結果,太田らによる等価先行圧密圧力の考え方と橋口による下負荷面の導入により,不飽和土供試体の力学挙動を良く説明できることが明らかとなった.
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