研究概要 |
基礎地盤もしくは土構造物内に補強材を敷設して,土構造物の剛性や強度を増加せしめようとする補強土工法のアイデアは,古くから土木技術の一つの要であった.多くの土構造物は多種多様な補強土工法の恩恵の上に,機能を持続し続けている.しかし昨今の社会ニーズは,新規構造物の建設から既設構造物の維持・補修に移りつつある.過去に土構造物が受けた履歴と無関係に,その構造物のグローバルな安定に寄与する形にまとめあげられている現行設計法では対処しづらいケースが増えつつある.構造物の部分的なリニューアル,機能更新が求められるからである.本研究課題はこのような社会ニーズに合理的に答えうる技術体系の確立を目的とした.また,層状に敷設されたジオシンセティックス,基礎の底面端部に付けられたスカート,テールアルメの定着帯,盛土底部横断方法に設置された松杭連結の梯子,松杭,砂杭や摩擦杭,…これらが立派に地盤を補強して(地盤の力学特性の改良=地盤改良に寄与して)機能していることは,経験で知ってはいても理屈がついてこない.構造物のグローバルな安定を考える現行設計法の限界である.これらの「経験」に「理屈」を提供しようとしているとも言える.土構造物に対する補強とは,剛な固定端で反力をとって土構造物を支えようとする機構ではない.土と補強材が一体となって剛性や耐荷力が向上しているメカニズムである.では,その力学的相互作用がどのように土構造物の剛性や耐荷力の向上に結びついているのであろうか.本研究では,土のダイレタンシー変形を補強材が拘束するメカニズムがポイントであると考えた.土構造物に荷重が作用する.その荷重によって土はせん断変形を生じようとするが,土はダイレタンシー特性を有するため,同時に体積膨張を生じようとする.この体積膨張を補強材が拘束することにより,土の剛性と強度が増し,補強効果が発現する.これを室内試験,模型実験,数値解析により検証し,その発現メカニズムを明らかにした.このような補強効果は,土自身の材料特性ばかりでなく,その土の締固め度合い,含水状態などによって変化すると考えられる.そこで本研究では,不飽和状態にある土の力学特性,特に締固め度合いや含水状態の影響を,一連の室内三軸試験を実施して議論している.この成果は,新しい水分特性曲線モデルの提案に結びついた.さらに,土構造物の品質を評価する解析手法を開発し,実際の土構造物の品質評価への適用性を検討している.以上の成果を,順次,学会論文集や国際会議などに発表していった.
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