まず、櫻井らの開発した異方性パラメータmを使った地山の剛性低下型モデルに、粘着力cと内部摩擦角φを低下させるひずみ軟化型モデルを組み込んだ非線形有限要素解析(ひずみ軟化解析)を用い、支保工および脚部補強工の様々なパラメータが、円形トンネルの変形挙動に与える影響について検証している。その結果から土被りの浅いトンネルの変形挙動を抑制するにはトンネルの上部支保構造よりもむしろ脚部支保構造が重要であることが数量的に評価できることを示している。 次に、開発した手法で阪神高速道路公団の長田トンネルの変形挙動を分析したところ、従来の弾塑性解析ではシミュレートできなかった南行トンネル直上領域の沈下を精度よくシミュレートできている。その結果を受け、支保工の変位抑制効果を見るため、支保工を入れたケースと無支保のケースのひずみ軟化解析を行っている。その結果、無支保の場合には南行トンネル上半掘削段階でトンネル崩壊に至り、支保工はトンネル上部の鉛直変位を抑制するのに高い効果を発揮しており、トンネル崩壊の第1段階であるトンネル直上領域の沈下を未然に防いでいる、との結論を得ている。 具体的には支保工は南行上半掘削時において、無支保に対して主計測断面1において鉛直変位で40〜60%、地表面沈下で約6o%、水平変位で約30%、主計測断面2おいて鉛直変位で約60%、地表面沈下で約60%、水平変位で約40〜50%の変位抑制効果があると推定している。支保の変位抑制効果については、ω(無支保の状態と支保のある状態での変形量の比)、とξ(トンネルの脚部補強の度合いを示すインデックス)を用いた図により、視覚的に現状を評価する指標を作成している。また、本解析結果をWongらのトンネル降伏モード分類図にプロットした結果、長田トンネル(南行)主計測断面1、2は、せん断帯が地表面に達しておらず、地山は健全な状態であるとの結論を得ている。
|