ファジィ理論・ニューラルネットワークと並んでソフトコンピューティングの新しいパラダイムとして最近注目を集めているのが、「カオス理論」である。カオスとは、「乱流や生体システムにおけるリズムなど自然界のいたるところに存在する非線形ダイナミカルシステムに内在する一見無秩序かつ予測不可能な現象のこと」をいうが、最近こうした複雑な現象の背後に隠れた法則を解明し、積極的に工学的な応用をはかる試みが胎動している。カオス理論は基礎科学の研究手法として重要なだけでなく、情報処理やプラント制御、生体現象や経済現象の分析・予測などへの応用の可能性もあり、脈波のカオス性を抽出することにより人間の疲労度やストレス度を判定するカオス医療機器も発表されている。カオスは生体のリズムとも関係が深く、人間の快適感にも影響を与えるといわれている。このようなカオス理論の工学的な応用を目指す新しい学際的な学問領域は「カオス工学」と呼ばれている。 土木の分野においても、近年コンピューターの目覚しい発達に伴い、様々な数値解析が行われるようになってきたが、数値解析において重要なパラメーターである岩盤不連続面形状などについては、正確に把握されていないのが現状である。また、岩盤不連続面形状を把握するには、その不連続面を計測することが必要不可欠であるはずだが、あらゆる制約のために十分なデータを得るのが困難な状況にある。 そこで本研究では、カオス理論を用いて岩盤不連続面形状のカオス性を判定することを試みた。解析手法としては、まずカオス性を判定するものとして、自己相関関数・フラクタル次元解析・リアブノフスベクトル解析、及び時系列変動の滑らかさに基づく決定論性評価アルゴリズムを利用して解析した。
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