研究概要 |
・洪水痕跡調査による樹林地破壊と回復過程に関する検討 セグメント1の礫床河川である利根川水系渡良瀬川について,平成10年台風5号出水1年後,2年後の河道内樹林地調査を行い,洪水撹乱後のハリエンジュ樹林の再生過程を求めた.これによれば,洪水撹乱によって倒木,傾斜木となったハリエンジュから著しい萌芽が起こり,その数は洪水撹乱後1年では洪水前に比し10倍の本数になり,2年後には,6倍(減少の理由は競争による生態学的淘汰のため)となり,萌芽したハリエンジュの樹高は2年後,高いもので4.5m程度となった.これまで得た知見より,洪水撹乱を受けやすい比高にある州上のハリエンジュは洪水撹乱の規模によってはその後著しい樹林地を形成することが分かった.これは,従来より指摘されている樹林化のメカニズム(洪水規模の低減,冠水頻度の低下から生まれる陸地部での樹林化)とは全く異なるもので,動的樹林化と呼んで区別した(冠水頻度低下によるものを静的樹林化とよぶ). ・洪水撹乱の規模評価の検討 洪水痕跡調査から動的樹林化を産んだ地点では河床材料の移動が認められ,河床,すなわち,物理基盤の撹乱規模評価が動的樹林化の進行を判断する上で重要であることが分かった.その指標として,河床表層の移動限界礫径を提案し,平成10年洪水を一般化座標系平面流計算から再現し,表層の50%程度の礫が動けば,動的樹林化の起こることが求められた.また,移動限界礫径を指標として,過去の洪水が動的樹林化につながったと推測される地点を数値計算から抽出し,樹林地の変遷過程を示した.
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