研究概要 |
本研究は,衛星リモートセンシングデータを用いて,沿岸域の水深を精度よく推定するために,沿岸域の底質の分光反射率を各水深毎に詳細に測定し,そのデータと検定測線の水深を用いて水中消散係数を評価し,水深の推定精度を高める手法を開発した.従来の水深推定法では,水中消散係数および海底反射率を一定と仮定して水深を推定していたために,その推定精度には限界があり,実用化には到っていながった.本研究では,新潟海岸を対象に,複数の参照測線を設けて,水深が0mから5mまで0.5m毎に底質を採取し,その分光反射率を詳細に測定している.その結果,砂浜海岸では海底反射率はほぼ一定であるが,数%の変動があり,特に水深2mから3mの領域で海底反射率がやや小さくなることが明らかにされた. 衛星リモートセンシングのデータは,SPOT/HRVおよびLANSAT/TMのデータを用いて水深の推定を行ったが,海面画像の輝度値は海表面の状態によって,輝度値の変動が見られたので,空間分解能が余り低下しないローパスフィルタを開発し,輝度値のノイズ成分を除去した.実測された海底反射率および検定測線の水深データを用いて,水中消散係数を推定したところ,水深に対する依存性が認められ,水深が浅いほど消散係数の値が大きくなる傾向にあった.得られた消散係数の値を用いて,検定測線から200〜300mほど離れた所の水深を推定し実測値と比較したところ,水深が4m以浅で誤差の標準偏差が0.3m程度で比較的良い一致を示し,砂州およびトラフ等の局所地形を推定することができた.しかしながら,水深の推定誤差が最大で0.5m程度ある所もあり,また検定測線から500m以上離れると誤差もやや大きくなることから,検定測線からの距離と推定誤差との関係を定量的に評価することが課題として残されている.
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