研究概要 |
衛星リモートセンシングデータを用いて,沿岸域の水深が精度良く推定できれば,廉価でしかも広範囲の水深データが得られるので,その価値は極めて大きいものである.従来の研究の水深推定法では,海底反射率および水中消散係数の値が、場所的に変化しないものと仮定しているために,波および浮遊砂等が存在する浅海域ではその水深推定精度は十分ではなく,実用化されるには至っていない.そこで本研究では,これらの変動性を考慮して水深を推定し,精度を高める手法を開発している. 本研究では,まず光学センサから得られる輝度値に含まれる大気の影響を取除き,短周期変動のノイズ成分を除去し,かつ有用な情報を抽出するために,変分法を用いてローパスフィルターが満たすべき偏微分方程式を導き,それを数値計算により解いて有効な情報を抽出している.実海域の海底反射率の変動を考慮するために,代表的な水深において底質を採取し,分光反射率を詳細に計測している.また,水中消散係数の変動性を考慮するため,検定測線を1本設けて,その係数の岸沖方向の変動を推定している.さらに,海面反射率および水氷中散乱光の短周期変動を取除くために,60m程度の平滑化フィルターを通して,各地点の水深を推定している. その結果,衛星リモートセンシングデータ(SPOT/HRV/XS)を用いて水深4m以浅の水深の推定が可能であり,検定側線から両側600mの区間において,推定水深の誤差の標準偏差が0.4m以内で推定できることが示された.したがって,これまでの水深推定法よりも推定精度が格段に向上していることから,本研究で開発された手法は,十分に実用に供することができるものと判断された.
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