研究概要 |
地下水汚染解析で最大の課題は,汚染物質の不飽和層中での鉛直移動に関するパラメータ(移流速度,分散係数)をどのように推定するかということである.このパラメータ推定では,空間分布のスケール依存性を考慮することが重要である.一方,水の移動では選択流(preferential flow)の影響が大きいことが,近年明らかになっている.本研究では,土壌中での選択流の形成機構を知ることで鉛直移動パラメータのスケール依存性の原因を解明しようと考えている.研究の初年度にあたる平成12年度は,そのための実験データを得るために以下の2つを行った. 1.溶質移動パラメータの空間分布,スケール依存性の観測:硝酸性窒素の供給源となる果樹園土壌の試料を,一定間隔で多数個採取し,溶質移動のパラメータを測定した.その結果,溶質移動のパラメータについて,土壌の均等係数,単位体積重量との相関係数が高いこと,3m以上離れるとセミパリオグラムが急に大きくなるという水平方向のスケール依存性が見られることを見出した. 2.選択流が存在する状態での溶質移動の室内実験:室内実験により,選択流が存在する状態で溶質移動パラメータが鉛直方向にどう変化するかを検討した.その結果,選択流のできやすい大きな粒径では溶質移動パラメータに鉛直方向のスケール依存性があること,団粒構造の粒子層では移流速度のスケール依存性は小さいが見かけの分散係数は浸透距離が長いほど大きくなること,非団粒構造の粒子層では浸透距離が長いほど見かけの移流速度が小さくなることなどを見出した. なお,2の成果についてはすでに発表済みであり,また平成13年度は,1,2の結果を関連付けるモデルを開発する予定である.
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