比較的小規模な都市河川における親水性の向上、あるいはウォーターフロント開発の一環として、落差工下流側にトレンチ部を設置し、水面の確保が試みられている場合がある(例えば、神戸市の住吉川)。このようなトレンチ部における河川流の特徴として、水理条件(流量や水深)とトレンチ部のアスペクト比(長さ/深さ)の組合せによっては激しい振動跳水が生じることが知られている。このような振動跳水が発生する場合、落差部への流れは自由落下するためにその水面が大変形し、トレンチ下流端と流れとの相互作用によって激しい流れの混合が誘起される。本研究ではこのような複雑な乱流場の特性を明らかにするために、長さ7m、幅15cmの実験水路を用いた詳細な計測を行った。まず、振動跳水の周波数特性を明らかにするために様々なアスペクト比のトレンチ部を作成し、振動跳水が発生する場合のアスペクト比と振動周期の計測を行った。その結果、ストローハル数とアスペクト比およびレイノルズ数の関係を明らかにした。すなわち、トレンチに関するレイノルズ数の増大に伴ってストローハル数が一定値に漸近することを明らかにした。次に、流れの縦断面をアルゴンイオンレーザー光膜で照射して内部流れを可視化し、高速ビデオで撮影した画像の流体画像解析から内部流れの構造を調べた。すなわち、474Hzでサンプリングした約1万枚の連続画像をPIV解析して各瞬間の流速分布および渦度分布などを求めた。さらに、トレンチ内部の各点の連続データからスペクトルを算出し周波数特性を明らかにした。振動跳水の発生条件に関しては、トレンチ部よりも下流側で発生する上昇流に起因する定在波の安定性が最も重要な要因であることを示すことができた。また、実際の河道が滑面状態であることはまれであるため、粗面上の局所流に関する実験的検討も行い、乱れの強度や剥離渦の状態が滑面とは異なることを明らかにした。
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