研究概要 |
既に筆者らが提案している降雨遮断タンクモデルを基に、必要なパラメータを少なくし、降雨時の気温をハモン可能蒸発散量h_Iの形で考慮し、降雨強度rにおける遮断蒸発強度E_Iを与える実用的式:E_I=a・h_I・rを誘導した。これより、(気温をパラメータとした)一定降雨強度下での一雨の降雨継続時間とその遮断蒸発量の理論的関係式及び一雨の降雨量Rとその遮断量Iの理論的関係式:I=a・h_I・R+cを得た。この関係式の妥当性を、遮断蒸発量観測データで検証した。 また、既にヒートパルス観測値(樹液流速)を用いたヒートパルス蒸散モデルを開発しているが、多くの観測データが必要なため、降水、流量、気温以外のデータが無い実流域の解析には利用できない。そこで、一般に蒸散量は概略、純放射量または可能蒸発散量に比例することが知られていることから、日蒸散量Tを気温情報のみから算定できるハモンの可能蒸発散量h_Tに比例させる形:T=b・h_Tで定式化し、筆者らの観測データはもとより、日本及び世界の種々の樹種で観測された蒸散データで検証した結果、土壌水分不足や頭打ち現象による蒸散抑制が強く作用する地域や年を除けば、上式でも十分使用に耐えることを確認した。 さらに、流域平均年降水量とダム地点等の年流出量との差を流域年蒸発散量と見なせば、上述の遮断蒸発量、蒸散量推定式を日単位で適用し一年間で集計したものは、その年の年蒸発散量に等しいことから、年単位の収支式が得られる。流域年降水量、年蒸発散量、年降水日数及び気温等についての数年以上のデータがあれば、その流域の遮断蒸発に関する係数(a,c)と蒸散に関する係数(b)を求められることを、那賀川、肱川、去川森林試験地等の実流域での観測データを用いて検証した。
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