研究概要 |
21世紀は地球の資源問題なかんずく水資源問題が課題の一つであるとされている.本研究は長期間の河川流量データの変動を調べ,地球環境の変化の影響があるのかどうか,水資源の長期的な変化に何らかの傾向成分があるのかどうかを調べた.その結果 1.世界河川の月流出高の分布とその特徴の分析から,流域面積が10万〜15万平方km程度のライン川のデータからは上流域における水資源開発の影響を検出することはできないこと,これは流況が非常に安定していることにもよること,乾燥地帯の河川では上流域におけるダム開発の影響は月流出高の分布に影響を与えていること,が判断された. 2.水資源の安定性を評価するために月流出高の時系列からその変動を平滑化するために必要な貯水池容量(開発水量の月数n)と開発水量(平均流出高の%でλで表す)の関係を計算した.このn-λ関係を長期データ,30年ごとのデータ等に区分して,水資源の安定性を評価した. ● 最も長い時系列としてライン川の180年間のデータを用いると,10年平均値でも月流出高に11〜24mmの違いがあること. ● 西欧諸河川では1921年に異常な渇水年があり,この年を除けば,水資源計画の策定には少なくとも30年のデータが必要であること. ● 30年程度の期間を一連の単位期間とすると,統計的に均質なデータ系列かどうかの判断がつけられること,すなわち10年程度の期間データでは水資源評価には短すぎること. ● アフリカのニジェール川の1907年〜1990年の月流出高の変動を調べた結果,30年程度の周期性が見出される.1960年から1980年にかけてのサヘル地域の早魃はこのような長周期の変動の影響を受けているものと推定される. 3.世界の諸河川のデータのみならず降水量データの時系列の変動特性を分析して,水資源の安定性の評価を進める予定である.
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