研究概要 |
研究の目的と達成:ウェーブレット解析は,時間(もしくは空間)域と周波数域の二領域での解析であり,変動が非定常性の場合にスペクトル解析よりも詳細に不規則変動の構造の解析が可能である.本研究は,ウェーブレット解析理論.手法の水工学分野への適用と浸透を目的に,次の諸点について研究を行った. (1)水文学: 過去の日本の主要地点の気象データについて地点と年代に関して同時に処理する2次元ウェーブレット解析を行い,気温の経年変化,降雨.豪雨および渇水の特性の地域的経年的変化の2次元的検出した. (2)リモートセンシング画像データ: 画像データの特性と広がりの空間的分布の判別にウェーブレット手法を用いて,植生活性度指数NDVIと地表温度との関係を明確に区分できた. (3)水理計測: 水理量計測の誤信号の合理的除去と計測の高精度化.流速・流量・降雨量・温度・濃度などの計測には必然的に混入する誤差の性質を分析し,合理的に誤差を除去し,高精度のデータを取得する方法を開発した.すなわち,元のデータにウェーブレット変換を施し,多重解像度解析によりノイズ成分をほぼ完全に除去できることを示した. (4)流体力学: 植生層内外の乱流構造(とくに大規模渦)が,植生と大気流との間の運動量や物質の交換に果たす役割について,スペクトル解析とウェーブレット解析により,明らかにした. (5)Mathematicaプログラムの整備とFORTRANプログラムの作成と整備: ウェーブレット解析プログラムは,数学解析用OS Mathematicaを用いたプログラムが斉藤兆古氏により発表されている.このプログラムを計算および図化に関して拡張.整備した. また,Mathematicaによるプログラムは,.演算式の展開が極度に短縮され,そのため演算内容が暗箱的であり,かつ大容量のデータ処理には適さない.(Fortranに較べてはもちろん,CやC++に較べても文法が複雑で,解読が大変だ.慣れるにつれて多少は読みやすくなるが.)そのため,FORTRANによるウェーブレット解析プログラム(一次元ウェーブレット,多重解像度解析,二次元ウェーブレット)を作成した.
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