研究概要 |
本年度は,主に,これまで有していた実験水路における浸食実験の継続とそのとりまとめを行うとともに,新たな実験装置の製作ならびにこの水路における新たな浸食実験を試みた. 第一の点に関しては,粘着性土の浸食機構を支配する主たる因子として考えられる「作用流速(あるいはせん断力)」,供試体における「粘土の含有比率」,「水の含有比率」ならびに混合材料としての「砂の粒径」,および「水温」に対して,その各々を系統的に変化させることで一連の浸食実験を行った.ここでは,これまでも一貫して使用してきた「S.Aクレー」という粘土を対象としており,今年度の検討の結果,この粘土に関する限り大半の測定を完了することができたと考えている.そこで,この成果に基づいて,限られた条件の範囲内ではあるが,試みに浸食速度予測式を誘導している.この予測式の精度と適用範囲に関しては更なる検討が必要であるが,このような浸食速度式の誘導に向けた研究の方向性を示すことができたと考えている. 第二に,これまでの実験が装置の関係で,通水開始後10分程度の浸食過程の解析に止まっていた点を考慮し,新たな実験装置の製作を行った.この装置では,供試体表面を上下流の水路底面の高さと常に等しく保つことができるようになっており,供試体の全てが浸食されるまでの比較的長い時間にわたるプロセスを解析することができる.現在検討を継続中であるが,現段階では,供試体に作用するせん断力を一定に保つ限り,浸食速度が時間とともに変化することはなく,初期の10分程度で測定される値と等しくなるとの結果を得ている.これは,第一の成果が有用であることを裏付ける結果といえる.この点も含めて,今後さらに検討していく予定である.
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