1)予測モデルの改良 これまでの研究から抽出された問題点の解決を図るために、予測モデルの改良を行った。 ・OD交通量と旅行時間の同時予測法の確立: 渋滞領域における旅行時間関数の信頼性が欠如していることを考慮し、OD旅行時間も未知変量とするよう定式化を行った。両者の相互依存性を考慮し、両者を同時推定するようにモデルの改良を行った。 ・マクロ交通流モデルの改良: 瞬時旅行時間ではなく実旅行時間を予測するため、空間平均速度に関する運動方程式の導入を行って秒単位のタイムステップによる精度の高いシミュレーションの実現をはかった。方程式中の高次項に関してはこれまで多くのモデルが提案されており、それらの比較検討を行った。 2)交通流シミュレーションを用いた学習データの作成法の確立 本予測モデルでは、事前のモデル同定のために大量のOD交通量と旅行時間データを必要とする。モデルの初期開発段階においては、交通条件や道路条件を広範に設定する必要があり、シミュレーションデータの方がそれらの条件を制御し易い。ここでは、マクロ交通流モデルを用いて仮想的に作成するものとした。圧縮流体型のマクロ交通流モデルのパラメータ推定に関し、1)推定手法の比較、2)パラメータの交通状態依存性、3)カルマン・フィルターによる交通状態推定の有効性に関する分析を行った。推定手法に関しては、制約条件付の非線型最小自乗法とランダムサーチに基づくBox's Complex法の比較を行い、後者がほとんどのケースにおいて有効であった。交通状態に応じて時間帯ごとにパラメータを推定することによって推定誤差を減少させることができる。また、Kalmanフィルターによって観測データに基づいて交通状態の推定値をフィードバック的に補正することによってさらに推定の精度を高めることができた。
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