平成12年度においては、(1)各地の商店街を視察・取材するとともに、(2)世帯アンケート調査結果に基づいて自転車商圏の空間構造を分析した。具体的な内容は次のとおりである。 まず現地の視察については、次の計13ヶ所の商店街を訪問して、自転車来客の集中・巡回の実態を観察した。熊本市内の商店街(5ヶ所)、熊本県八代市内(2ヶ所)、荒尾市内(2ヶ所)、茨城県古河市(1ヶ所)、大阪府豊中市内(1ヶ所)、名古屋市内(2ヶ所)。 つぎに空間構造の分析については、筆者と熊本市が協同して過去に実施した世帯アンケート調査票を再利用して、熊本市都心商店街に集まる主婦の買物自転車の発生特性と自転車利用特性を集計・考察した。その結果、次のような特質が明らかになった。買物行動の発生率(人/人)は商店街に近い圏域ではほぼ1.0であり、距離につれて下がっていくが、4km圏域でも0.8前後の高い値になっている。これは都心商店街の商圏が広いことを意味する。買物頻度(回/日)は平日よりも休日のほうが多くて約2倍である。休日の場合、商店街に近い圏域では0.6と高い値であるが、1〜4km圏ではほぼ0.3であり安定した値を示している。買物における自転車の利用率は1km帯で約70%、2km帯で約40%、3km帯で約5%であり、熊本市都心商店街の自転車商圏は半径3kmに及んでいる。 これら「発生率」「頻度」「利用率」の定量的な距離変化が得られたことにより、何人ほどの主婦が自転車で商店街に買物に来るのかを試算する準備がととのった。
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