研究概要 |
本研究では、励起波長、蛍光波長および蛍光強度を同時に測定する三次元励起蛍光スペクトル法を用いて、環境水中の溶存物質の特定化および定性・定量を行い、次のことが判明した。 1)下水二次処理水および都市近郊の河川水や湖沼水に含まれる蛍光性有機物質のEEM(Excitation Emission Matrix)図を作成し、解析した結果、フルボ酸様有機物(励起波長270nm/蛍光波長435nm、以下ex.270nm/em.435nmのように記す)、蛋白質様物質(ex.280nm/em.340nm)、下水由来特有の有機物(ex.495nm/em.515nm)、ノニルフェノールエトキシレート(NP_nEO)などの非イオン界面活性剤(ex.230nm/em.295±5nm)および蛍光増白剤(ex.350nm/em.435nm)などに分類することができた。 2)フルボ酸様有機物は相対蛍光強度を測定することによって、高感度定量分析が可能であった。 3)蛍光分析が可能な蛋白質様有機物はインドール環を含む蛋白質であり、その由来は下水処理水中の蛋白質や藻類が生産した蛋白質であった。 4)下水由来特有の有機物は生物難分解性で、疎水性の分子量500〜3,000Daの物質であり、尿中に含まれていることが判った。 5)逆相HPLCと三次元励起蛍光スペクトル法とを併用することにより、種々のエトキシ鎖を持つNP_nEO類およびそれらの酸化物のNP_nEC(ノニルフェノールオキシ酢酸)類の定性・定量分析が可能であった。NP_nEOは微生物分解を受け、ノニルフェノール(NP)、NP_1EO、NP_2EO、NP_1EC、NP_2ECに分解され、さらにこれらの分解産物は光分解を受けることが判った。 6)蛍光増白剤はDSBP(4,4'-bis[2-sulfostyryl]biphenil)と思われ、活性汚泥プロセスで約50%除去されることが判った。
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