研究概要 |
廃棄物処分場で生じる浸出水に含まれる有害物質を調査した。特に,その中でもビスフェノールAに着目し,存在形態,流出濃度に与える各種要因の検討を行った。その結果,ダイオキシンとは異なり,ビスフェノールAは,ある程度安定化した浸出水,有機分を多く含む浸出水,焼却残差のみを埋め立てた処分場の浸出水ともに,ほとんどSS分に吸着しておらず、溶存態として浸出水に存在していることがわかった。また,凝集での分離もできないことから,フミン質等の有機物とも結合していない状態で存在していることがわかった。ある同一処分場での1995年から2002年のビスフェノールA濃度の調査結果から、TOCや塩化物イオンとは流出濃度に相関が見られず、異なる流出特性を持っていた。不飽和土壌中の水分移動を記述する式によって,不飽和地盤中のビスフェノールAの移動をモデル化した。モデルでは,不飽和土壌中の水分をmobile zoneとimmobile zoneにわけて考察した。本研究のシミュレーションでは、ビスフェノールAの流出濃度は,遅延係数や降水量によって影響され,必ずしも降水量が多い時に希釈効果によって低くなるとは限らなかった。TOCや塩化物イオン濃度とビスフェノールAの挙動の差をモデルによって説明した。本研究のシミュレーションでは,mobile zoneのビスフェノールAの濃度は,プラスチックからの溶出よりもimmobile zoneからの物質移動の影響が大きかった。ビスフェノールAの流出濃度は、廃棄物層内に浸出水を貯留することにより増加することがわかった。この理由として、水位の増加にともなう飽和領域の増加によって、ビスフェノールAを溶出するプラスチックとの接触面積が増え、溶出量が増加することが考えられた。
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