研究概要 |
国内各都市における、主として重金属の土壌中濃度を測定し、汚染レベルの現状とその分布の特徴を明らかにすることを試みた。また、いくつかの土壌汚染測定法の妥当性についても検討した。その結果、以下のような結論を得た。 1.土壌中重金属濃度の測定法として様々な抽出方法があるが、どの抽出方法が市街地土壌の汚染レベルを最もよく表すかを調査結果から検討した。その結果、塩酸抽出による方法が硝酸抽出などの他の抽出方法に比べ、汚染の地域性を良く表していることが明らかとなった。 2.サンプリングを各地点において約2.5cmずつの上層と下層に分けて行い、上層サンプルと下層サンプルとの差から、人為的汚染を明らかにすることを試みた結果、上層と下層の差をとる方法は、ケミカルフォールアウトの同定に有効であること、また、その地点での高濃度汚染の時期をある程度推定できることが明らかとなった。 3.中部地方において日本列島を横断するルートで調査を行った結果、重金属市街地土壌汚染には鉱業の影響が大きいこと、中部地方太平洋岸においては現在よりも過去において大きな汚染が存在していたと推定されることが明らかとなった。 4.人間活動を表す指標を作成し、この指標を説明変数とし、土壌中重金属濃度を目的変数とした重回帰分析を行ったところ、人口密度指標に影響を受けていると考えられる元素にはCr, Coなどがあり、ごみ処理場からの距離の指標に影響を受けている元素としてはSnが考えられた。またZn, Cdは鉱山周辺で高濃度となることから鉱山あるいは精錬所の影響を受けていると考えられた。 5.土壌の直接摂取による健康リスクレベルの評価も行った。その結果、PbとAsの健康リスクへの寄与が大きいことが明らかとなった。 6.土壌抽出方法としてのPBETによる測定結果の代用方法としては、1N塩酸抽出法がすぐれていることを明らかにした。
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