明治以降の「近代的」な国造りにあたって構築されていった数多くの新奇な構造物が、どのような技術的な背景のもとで設計・施工されたかを調査・分析することで、伝統的技術と西欧流の輸入技術の因果関連・消長を明らかにすることをめざした。 技術の継承・断絶の状況は、それぞれの分野によって大きく異なるため、交通(鉄道と道路の橋とトンネル、運河のトンネルと閘門、港の防波堤、灯台)、農業(樋門、ダム)、電力(ダム)、衛生(ダム、ろ過施設)、治水(砂防ダム、水制)、軍事(砲台)のように対象ごとに、「近世以前と明治以降の構造物で見る対比」ということで、(1)需要はどう変化したか?(2)技術はどう変化したか?、(3)地域性はあったか?、の3つに分けて分析した。(1)については、さらに、(1)それまで全く存在しなかった(近世)→少数が重点的に造られた(近代)、(2)それまで全く存在し、なかった(近世)→全国隅々まで多数造られるようになった(近代)、(3)それまで少なかった(近世)→色々な理由で数が増えなかった(近代)、(4)それまで少なかった(近世)→全国隅々まで多数造られるようになった(近代)、(5)それまでも結構多かった(近世)→全国隅々まで多数造られるようになった(近代)、の5つの項目に分けた。(2)については、(1)小規模な構造物では伝統技術がほとんどそのまま継承された分野、(2)伝統的技術の上に西欧技術が「改善」という形で展開していった分野、(3)伝統的技術が時代遅れだと否定され西欧技術の吸収に汲々としていた分野、の3つの分野に分けた。(3)については、(1)地域性が強い、(2)地域性が少ない、の選択肢だけとした。特に(2)の伝統的技術の伝承という最も重要なテーマについては、(1)小規模な構造物では伝統技術がほとんどそのまま継承された分野として、防波堤、灯台、灌漑ダム、水制、(2)伝統的技術の上に西欧技術が「改善」という形で展開していった分野として、石アーチ橋、木橋、RC橋、トンネル、防波堤、樋門、水制、砂防ダム、(3)伝統的技術が時代遅れだと否定され西欧技術の吸収に汲々としていた分野として鋼橋、灯台、閘門、農業樋門、ダム、ろ過施設、水制、砲台を上げた。 今回確立した「技術の系譜をもとに土木遺産を評価する手法」を応用して、平成12年度の土木学会選奨土木遺産10件の評価を試みた
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