研究概要 |
下水処理システムにおける回収可能エネルギーには太陽光・下水汚泥消化ガス・下水熱・下水の位置エネルギーがあり,廃棄物処理システムにおける回収可能エネルギーには焼却排熱と廃棄物を熱源とする発電などがある.本年度は両システムでのエネルギーの相互利用ネットワークとして,下水処理施設にて発生した消化ガスの廃棄物処理収集システムへの利用について検討した.すなわち,(1)消化ガスを用いたオンサイトのリン酸型燃料電池による発電とこれの電気ゴミ収集車での利用と,(2)消化ガスからのメタノール製造とこれのメタノール燃料電池ゴミ収集車での利用の2ケースを考え,両者の長短所を検討した. どちらのケースにおいても,得られる消化ガスをエネルギー源として,廃棄物収集・運搬作業に必要なエネルギーを十分に供給可能であった.エネルギー消費量に対する供給量の比率は,メタノール改質型燃料電池利用が4.7,オンサイト型燃料電池利用は4.3,従来型のガスエンジン利用では3.7であった.比率ではメタノール改質型燃料電池利用が最も優位であるが,余剰電力の利用用途や燃料電池によるコージェネレーションシステムを考慮した場合にはオンサイト型燃料電池が最も優位となる. また,エネルギーの相互利用により電気収集車あるいは燃料電池収集車を利用することは,ディーゼルごみ収集車の走行によって排出されていたNOx,SOxの量の大幅削減をもたらす.燃焼過程をもたない燃料電池の特性が大きく生かされた結果である. このように,本年度は,静脈系施設によるエネルギー・資源相互利用において,消化ガスの持つエネルギーをゴミ収集システムへの適用することの可能性と,それによる環境負荷物質の削減効果を明らかにした.
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