公共用水及び汲み置き水の微生物的水質悪化を実験的に求め、温度の高い夏期の悪化速度が冬期に比して早いことを確かめ、阪神大震災が微生物対策の例示にならず、震災後の対策は夏期を中心に考えるべきことを実験的に示した。飲み水の摂取水量をアンケート調査で調べた。その結果摂取水量は688mlであったが、ボトル水を差し引くと580ml、水道蛇口直接は浄水器を経由するのを含めて67mlであった。そこで摂取水量を1lとして、水道施設、下水道施設の破壊程度と水源汚濁の程度、水道水及び公共用水の微生物的水質劣化を予測し、水利用の際の微生物リスクを推定した。そのうえで、個人レベルで安全な飲み水を確保する方法を提案し、また家庭における汲み置き水の保存期間を実験的に明らかにし提案した。汲み置き水は暗所に保存するか明所で保存するか、また温度によって水質悪化の速度が顕著に異なり、暗所に保存すること、夏期で5日間、冬期で10日間を保存の目安とする。塩素が補強された水(遊離残留塩素濃度2mg/l程度)では、夏期で10日間、冬期で20日間を保存の目安とする。止むを得ず明所に保存する場合は、夏期、冬期とも毎日入れ替える。 行政当局の対策として、各家庭で取れる方策を広報すること、地域における井戸など緊急に利用できる水の在処と水質を平常時に知らせておくこと、一旦震災が起きたら給水域全体の残留塩素と濁度をできるだけ早く測定すること、その体制を整えておくこと、家庭用塩素剤を用意、配分しておくことなどを提案した。昨年の台湾調査と今回の実験を合わせて、ボトル給水の在り方についても考察した。
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