研究概要 |
建築構造物には,コ型の平面形状を持つ開断面耐震壁が配置される場合が少なくないが,コ型開断面耐震壁は捩れ要素を含むために構造特性は複雑であり,これまで十分な検討は行われていない。本年度の研究では,捩れを拘束した二方向水平加力実験を行い,二方向終局曲げ強度と強度時における捩り抵抗モーメントについて検討した。試験体は,実大の約1/4程度の等辺コ型開断面とし,壁厚を2通りに変えた合計10体である。加力装置は,3台のアクチエータをそれぞれウェブ壁と両フランジ壁の壁頂に取り付けて,各壁の変形および荷重をパソコンで計測・制御出来る二方向加力システムを構築した。また,鉛直軸力はリリーフ弁付き油圧ジャッキにより,コ型開断面の図心に当たる位置にT字形に加工したH形鋼を介して加えた。加えた軸圧は,ロードセルにより計測し,軸圧比が1/30となるように調整した。二方向加力の種類は,ウェブ壁方向をx軸とするx-y座標系で,0゜,22.5゜,45゜,67.5゜の各一定方向への変位漸増正負繰り返し加力と,1サイクルの変位履歴が円形およびH字形としながら,サイクル毎に変形を増大させる合計6種類とした。本研究で得られた主な成果はおおよそ以下のとおりである。1.柱1本が圧縮となり,他の全ての柱筋と壁筋が引張降伏する4通りの曲げ破壊パターンから求められる計算値をQx-Qy座標上にプロットして描かれる四辺形は,二方向終局曲げ耐力のほぼ上限を表す。2.二方向変形の履歴によっては,鉄筋の応力-歪み関係の履歴特性から前記の終局耐力値を取り得ないことがある。3.ウェブ壁方向のみの荷重を受ける場合の捩れ拘束モーメントは,フランジ壁の鉄筋の降伏状況から算定できる。
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