研究概要 |
建築構造物には,コ型の平面形状を持つ開断面耐震壁が配置される場合が少なくないが,コ型開断面耐震壁は捩れ要素を含むために構造特性は複雑であり,これまで十分な検討は行われていない。前年度の研究では,捩れを拘束しながらニ方向からの水平加力実験を行って,二方向終局曲げ強度算定式を提案するとともに,強度時の捩れ変形を拘束するのに必要な捩りモーメントを算定する方法を提示した。本年度は,捩れを自由に生じさせる水平加力実験と純捩り加力実験を行い,強度と変形性状について検討した。試験体は前年度と同形状の等辺コ型開断面であり,壁高を2通りに変えて合計6体作製した。加力装置は,実験の種類に応じて3台のアクチェータをそれぞれコ型断面のウェブ壁と両フランジ壁の壁頂に取り付けて,各壁の変形および荷重をパソコンで計測・制御出来る二方向加力システムを構築した。加力の種類は,捩れを伴う水平加力実験ではウェブ壁のみに加力した場合と一方のフランジ壁のみに加力した場合,純捩り加力実験では両フランジ壁に偶力を与えた場合の3通りであり,それぞれ正負漸増の繰り返し加力を行って破壊に至らしめた。破壊形式は全て柱主筋が降伏して終局に至る曲げ破壊型である。本研究で得られた主な成果はおおよそ以下のとおりである。1.捩れを生ずることによって,強度時の変形が大きくなる。2.変形が大きくなることによって,捩れ拘束時強度に達する以前にコンクリートが破壊して終局に至ることがある。3.片持ち梁形式の本試験体形状のような場合にはSt.Venantの捩りモーメントの影響が無視できない。4.せん断変形を考慮した純捩り弾性理論式による捩り剛性とひび割れモーメントは実験結果に良い対応を示した。5.ひび割れ後のSt.Venantの捩り剛性低下率は0.28〜0.37であった。
|