降伏比が低く、降伏棚の長さが標準的な材質としてSTPT410-S-H(配管用鋼管)で外径60.5×肉厚8.7×長さ5.5mのものを入手し、外径を60に統一して内径を切削により変化させた試験体を製作した。試験体の径厚比は10-120の18種類総数31体である。 材料の機械的性質は引っ張り試験によると、所謂軟鋼の範疇に属する材料である。試験体は製作後引張り試験片と合わせて残留応力除去焼鈍を行った。焼鈍条件は600℃15分保持後炉冷である。これらの試験体の圧縮実験を平押しで行った。 既往の理論によると円形鋼管は圧縮を受け降伏棚に至ると素材の応力-歪関係の接線係数が零になるために、固有値的にはどんなに径厚比が小さくてもこの棚上で座屈してしまうことになる。その理由は平板と異なり象の足モードで座屈する時板としての曲げ剛性が降伏棚上で平板と同様に存在したとしても曲率に座屈抵抗を失う組み合わせが存在する事が推測できる。 実験によると径厚比50を境にそれより小さいものは降伏棚上での座屈を経ずして歪硬化域に達した後座屈する事が明らかになった。 この事は既往の理論では説明しきれない事実であるので、今後異なった素材で実験を行い更に円形鋼管の特性を追求する予定である。
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