1.降伏棚の長さが長い材質としてSTKM-S45Cで外径60.5mm×肉厚8mm×長さ6mの継ぎ目無し鋼管を入手し試験体を製作した。試験体は外径を59mmに統一して内径を切削により変化させて製作し、径厚比が9〜120の19種類30体である。 2.材料の機械的性質は降伏応力度σy=398N/mm2、降伏比YR=56%、降伏棚の長さβεyをあらわすβ=3.98(εy:降伏歪)である。試験体は機械削りにより製作後引張り試験片と合わせて残留応力除去焼鈍を行った。焼鈍条件は600℃15分保持後炉冷である。これらの試験体の圧縮実験を平押しで行った。座屈モードはすべて象の足モードが観察された。 3.座屈に及ぼす降伏棚の長さの影響を調べるには前年度に行ったSTRT410-S-H(配管用鋼管)の実験結果が比較になる。この材料はσy=304N/mm2、YR=63%、β=12.6であった。降伏棚が長いほど座屈耐力が低い結果となった。 4.既往の理論は塑性域の座屈式に接線係数Etか掛かっているが、固有値的には歪硬化域に至る前に降伏棚上でEt=0となってしまうので、降伏棚を克服できない。実験によれば耐力が降伏値を超えるものが、降伏棚上で一度座屈を経験しているという証拠は観察されていない。この点については新しい理論を提案できる可能性がある。 5.降伏棚の長さが座屈耐力に影響するなら、塑性学的に合理性に問題があると言われている変形理論の座屈式に含まれている割線係数が役割を果たすと考えるのも自然で、事実変形理論は実験結果と良く符合する。
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