圧縮をうける円形鋼管の塑性域における座屈耐力式には接線係数Etがかかっており、固有値的には降伏棚上でEt=0となって座屈してしまう。しかし円形鋼管は径厚比が小さくなると降伏棚で座屈せずに歪硬化域に達するような振る舞いを示すのは実験事実の示すところであり、理論との間に乖離が存在する。他方平板は座屈時に捩れを伴うが板の捩り剛性はどの理論によっても降伏棚上で零にならない。このことによって幅厚比の小さい板は降伏棚上で座屈を伴わず歪硬化域に達し得る。これは円形鋼管と比べて大きく異なる。そこで本研究は降伏棚のある熱間成形鋼管や降伏棚の無いアルミニウム合金鋼管短柱の圧縮実験を行い、理論との整合性を調べ、降伏棚の果たす役割を調べた。以下の事が明らかになった。 1.箱形断面と比較すると、円形断面試験体の方がおおむね耐力が高いが肉厚になると両者の耐力は近づく。これは理論上予測される最初の座屈固有値の大小の推測と矛盾する。 2.鋼、アルミニウム共、塑性化後の耐力の上昇は変形理論による値にほぼ一致している。 3.象の足モードで座屈するとき、直径の変化に起因して周方向に発生する曲率は、既往の研究では無視されているが、これを考慮して弾性座屈解を求めてみたらその差異は1%に満たなかった。 4.板は馬の鞍形のモードで座屈するときに耐力が低いが、4.のモードはこれにあたり、塑牲流れの進行過程にある円管では弾性域とは異なった効果があるかもしれない。
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